暖かな夜に

若い頃は額の幅が3センチ程しかない、
綺麗な富士額だった。
月日は百代の過客、
富士の裾野は上方に拡がり、
樹木はまばらになった。

鏡を見て歯を磨いていると、
その額に蚊がとまった。
叩くとぱちんと乾いた弱い音がして、
蚊は洗面台にすーっと落ちていった。
出てこなければいいものを、
暖かさに誘われて出てきてしまったものだから、
こんなことになってしまった。
この時季の蚊を何と言うのだか忘れてしまった。

掛け替えのない一日でありますように。
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